月別アーカイブ: 2012年3月

2012年03月29日

岡山県日生に行ってきました

3月8日ということで、すでに20日以上前の話になってしまいますが、iJFFプロジェクトのアクションリサーチとして関わらせていただく、岡山県日生のフィールドへ伺って参りました。

日生では、藻場の再生を漁協が自主的に取り組まれてきましたが、現在さらに、海洋牧場を整備中で、その利用ルールなどについて、海洋空間計画の必要性が浮上しています。この件については、海洋政策研究財団さんが、数年前から取り組まれています。

Hinase Fishing Village in Okayama, Japan

私たちが訪れたときは、牡蠣の収穫の最盛期とあって、ものすごい勢いで牡蠣が処理されていました。牡蠣を剥くのは、いまだに人間の手でないとできないそうです。コンベアなどの導入で効率化は図られていましたが、やはり、地元の漁師の奥さま方など(中国人研修生も一部いるそうです)が、一列に並んで黙々と、牡蠣の身を出す作業に従事されている姿には、何か、考えさせられるものがありました。

Oyster Processing in Hinase, Okayama

私見ですが、このような形で、地域に雇用が発生するからこそ、「里海」なのかなと思いました。この作業を機械が代替できるのであれば、日生という地域に人が住む必然性が薄れてしまうでしょう。都市の最終消費者の視点だけからすれば、手作業による牡蠣の処理は、きわめて効率が悪いことなのかもしれません。しかし、地域に暮らすという視点、海の環境を維持するという視点では、このような形のほうが望ましいのだろうな、と思った次第です。

この夜、この牡蠣でつくっていただいた雑炊をいただいたのですが、なんと美味しかったことか。

「科学」に基づく政策が必要だというとき、経済合理性だけでなく、また、人間以外の生物の保全だけでもなく、そこに、海とかかわる人々の営み、美味しいものを食べる幸せ、などといった、従来の「科学」が見落としがちな視点も含めて、科学に基づく政策のあり方を考えていく必要があるのだろうな、と思う次第です。そうすることで、「科学」自体も再構築されるのだろう、と思います。

(文責:研究代表者 松浦正浩)

2012年03月25日

国際シンポが「文教ニュースで取り上げられました」

さる3月6日に開催された国際シンポのもようが、「文教ニュース」3月19日号に掲載されました!

Bunkyo_News_iJFF

2012年03月06日

第1回国際シンポジウム「共同事実確認の可能性: 政策形成における科学的情報の役割」を開催しました

2012年3月6日に、iJFF第1回国際シンポジウム「共同事実確認の可能性: 政策形成における科学的情報の役割」を開催しました。当日は雨の中、多くの方々にご参加いただき、米国において共同事実確認などの協働プロセスを実践している先駆者から、すばらしいプレゼンテーションをいただきました。詳細な開催報告は別途ウェブサイトで行います。以下取り急ぎ当日の写真をご紹介します。

開会ご挨拶
森田朗(東京大学大学院法学政治学研究科 教授)
(科学技術イノベーション政策のための科学 研究開発プログラム総括)
Morita

ビデオレクチャー
Joint Fact-Finding and Collaborative Adaptive Management
ローレンス・サスカインド (マサチューセッツ工科大学教授)
Larry Susskind in Tokyo, Japan

基調講演
Science and Policy: Better Decisions through Joint Fact-Finding and Collaboration
リン・スカーレット
(Resources for the Futureシニアフェロー、アメリカ合衆国内務省元副長官)
Lynn Scarlett

基調講演
Humble Inquiry: The Practice of “Joint Fact Finding”
ピーター・アドラー
(Accord 3.0、Keystone Center元CEO)
Peter Adler

iJFFプロジェクトについて紹介
松浦正浩(研究代表者、東京大学公共政策大学院特任准教授)
Masa Matsuura

パネルディスカッション
リン・スカーレット、ピーター・アドラー
【コメンテーター】
城山英明(東京大学法学政治学研究科 教授)
平川秀幸(大阪大学コミュニケーションデザイン・センター 准教授)
松尾真紀子(東京大学公共政策大学院 特任研究員)
司会:松浦正浩
Panel Discussion at the iJFF conference in 2012

2012年03月02日

カナダと米国で打ち合わせ、情報収集をしてきました

2月21、22日に、カナダと米国で打ち合わせ、先行事例の情報収集を行ってきました。

2月21日はiJFFのメンバー、ブリティッシュコロンビア大学の太田義孝研究員のもとへ、高田百合奈さん(現在首都大学東京修士課程)と伺い、岡山県日生における海洋空間計画の検討の進め方について相談しました。従来は2次元の図面で検討されてきた海洋空間計画を3次元ビジュアライゼーション(最終的にはアニメーション化)することにより、科学技術の専門家(里海研究者など)と地元のステークホルダー(漁業者など)のインタラクションを活性化させ、従来の科学的知見とローカルナレッジを融合した新しい「科学的情報」の生成へとつなげることを、現時点での最終目標にすることにしました。

Future Ocean Lab at University of British Columbia
Future Ocean Lab at the UBC Fisheries Centre

2月22日には、昨年12月に東大政策ビジョン研究センターのシンポジウムにもご登壇いただいたRaab Assoc.のJonathan Raab氏に、オフィス近くのいかにもアメリカなダイナーでお会いし、プロジェクトへの協力を要請しました。エネルギー関連については昨年のシンポで情報提供いただいておりましたが、海洋環境の事例について、マサチューセッツ州の海洋空間計画のプロセス、カリフォルニア州の海洋哺乳類保護に関する計画プロセスについてご紹介いただきました。また、MIT Dept. of Urban Studies and PlanningのLarry Susskind教授のもとを伺い、3月6日のセミナーでのご講演を録画してきました。

Jonathan Raab at Raab Associates Office
Jonathan Raab at his office

今回の訪米の主な気づきとしては、iJFFは、科学技術政策を念頭に置いたプログラムの一環として実施しているのですが、科学技術政策の結果として生成される科学的情報は、科学技術政策にフィードバックされるのではなく、環境政策・規制や、今回は出てきませんでしたが医療政策、安全規制などの検討で利用されるということです。ですから、科学技術政策のコミュニティが、自己評価や改善を検討するのも必要でしょうが、ユーザーである環境・エネルギー・医療などの政策分野のコミュニティ(しかも現場レベルの人々)の視点から、科学技術政策に求めるニーズを洗い出すことも、iJFFの大きな目的のひとつではないかと思われました。